どうも、節約系ミニマリストのゆるいてんちょうです。
うちの実家は母牛を人工授精させて子牛を産ませて、それを1年育てて肥育農家に売るという和牛繁殖農家をしています。だいたい300kgくらいになるまで育てます。
あと3年半したら実家を継ぐために動き始めますが、農業は儲からないというイメージが強いと思います。
しか~し和牛繁殖農家はわりと儲けやすい農業ですよ。
他の農家と比べて儲けやすい点として、他の生産者との差別化がしやすい点がある。
野菜だとJAに卸している限り、誰が作った野菜だろうと値段は変わらない。
めちゃくちゃ甘いトマトを頑張って作ろうが普通のトマトと同じ値段で買われてしまう。
またニワトリ、豚などもいちいち一羽一頭ずつセリにはかけないだろう。
多産で成長の早い動物なので、一個体を丹念に仕上げていくというよりは数で勝負という感じだ。
黒毛和牛に限らず牛は1年で1頭しか生まない。そのため一頭一頭の価値が高く、一頭ずつセリにかけて値段を決めていく。
ということは差別化がしやすく、努力してよい牛を育てればしっかりと売値も上がるのだ。
競走馬についてもセリの方法は同じだが、競走馬は大きく育つ&速く走れるという能力と血統がセリの値段を左右するが、黒毛和牛は良い血統で大きく育ってさえいればよい。そういう点で競走馬生産より価格が安定しやすい。
牛は大型家畜なので病気にも強く、豚コレラや鳥インフルエンザのような大流行が数年ごとに発生するということもない。ということでエサに抗生物質を混ぜて与えるというようなこともしない。
また野菜農家などは毎年種を買いなおさないといけないF1種を生産している場合が多く、自家採種(自分で育てて種を取ってそれをまいて次の世代を育てるということを繰り返す)ができない。
黒毛和牛の場合、メスが生まれた次世代の繁殖牛(母牛)としてそのまま牛舎に残すこともできる。もちろん肉用として売ることもできるし、地元のほかの農家に繁殖牛としてセリで落札されることもある。
そのため最初のスタート段階だけ母牛を用意すれば、あとは自家繁殖で母牛を買わずに頭数を増やしていけるのだ。なので、スタートすればあとで追加でかかる費用が抑えられる農業だ。ただ、それを繰り返すと血統が偏ってくるので、別の血統の母牛も定期的によそから購入してくるけどね。
また、奄美大島~沖縄にかけての和牛農家はサトウキビも併せて生産していることが多い。さとうきびは1トンでいくらと値段が毎年決められ、重さでしか評価されない。
そのため、頑張ってよい品質を!という努力は無駄になる典型的な儲からない農業である。
しかし、台風にも雑草にも強く農薬にも強いので、植えた後はある程度ほっておいても育ってくれるお手軽な農作物であり、さとうきびの上の部分葉っぱは栄養価が高く、牧草の育ちにくい冬場に牛のえさとして最適である。
このようにサトウキビで儲けつつ牧草代を節約できる運営ができるのも強みだ。
サトウキビでなくても商品にならない野菜などを飼料として使えるし、牛糞は発酵させてたい肥に回せるので、野菜などを作りながら和牛を育てるのは相性が良い
まとめると、
①セリで売るので差別化しやすい
②病気にかかりにくい
③野菜でいう自家採種ができる
④ほかの農業と組み合わせやすい
とはいえ新規就農は大変な和牛繁殖農家
肉牛業界におけるピンチは99年の狂牛病さわぎ以来、20年起きていなかった。
ここ15年は毎年売値が上がり続けていたくらい好景気だった。
コロナ禍で焼き肉屋や高級レストランで和牛の消費量が減ったが、gotoeatではそれらの店が一番集客するのでなんとか持ち直しそうだよ。
あと肉牛の売り上げに関して、一頭当たりの売値が100万未満なら1500頭分まで所得税と住民税が無税という特別税制があります。
つまり15億円売り上げても無税。
ということで和牛繁殖農家は非常に割の良い農家である。
問題は始める時に費用が高いという点か。
母牛一頭60万円で購入するとして20頭で1200万円
牧草地と牛舎の土地の購入or借りて&牛舎建築で数千万円
あと牛糞の処理につかうショベルカーとか牧草運ぶ軽トラなどもかかるとなると、新規で始めるのが難しいな・・・
牛舎の周りに和牛繁殖農家がいればよいけど、いない場合は糞尿の悪臭問題を嫌がり、周りの住民ともめる可能性もある。そうなるとさらに新規で始められない。
うちの実家は現金は全然ないけど、土地と牛舎、機械類、繁殖用母牛はすでにあるので、そこを引き継いで始められるというのはなかなかおいしい。
私は入ってくるお金こそ少ないけど、出ていくお金も少ないという低空飛行でキャッシュフローの少ない「しょぼい農業」を提唱していこうとしていますが、入ってくるお金はまあまあ多く、出ていくお金が少ないという良い形に持っていけそうだ。
儲かったところで儲けた分農地を追加購入するとかで現金は結局手元には残らないだろうけど、人を雇って少しは地元に貢献できるようになるかもしれないな。
そうなれば、新規就農者の研修受け入れや開業時の土地を貸してあげたりとかもできるかもしれない。
しょぼい農業がストレスフルな令和日本で疲れた人の新しい働き方になるかもしれんよ。
2020/11/1記事作成