このお話は、普通の25歳独身社会人「物欲 草太(ものほし そうた)」が、
極限系ミニマリスト「物無 尊(ものなし たける」との出会いにより、
ミニマリストとして目覚めていく物語である。
というコーナーを始めました。
物語の形をとりながら、節約系ミニマリズムをわかりやすく説明できれば思います。
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僕の名前は物欲草太、25歳。
沖縄で月給18万円の中小企業で3年目の営業として働いている。
そんな、僕には憧れの上司がいる。
それは加川部長だ。いつもスタイリッシュで女性社員のあこがれの的なのだ。
40歳にして本社の部長職を務めているのは、だてじゃない。
32歳の奥さんと5歳と7歳の子供を愛し、海沿いのマンションに住み、
それでいて仕事もバリバリこなすビジネスマンだ。
全身ブランド物を身に着け、出社時にはスポーツタイプのBMWで
颯爽と登場するのだ。
くううう~あこがれるううう。
でもね、噂によると、近く加川部長は独立をするらしい。
本人は否定するが、どうも態度がおかしい・・・
恐らく着々と独立のための土台作りをしているところなのだろう。
一緒に連れて行ってほしいけど、僕の能力では難しそうだ。
それに比べて全く憧れないのが多田係長だ。
パソコンも得意ではない多田係長は、ただ椅子に座ってぼ~としていたり、
社内をうろうろ歩いているだけだ。
車だって、ぼろい軽自動車に乗っている。
家だって4人家族で小さい賃貸のアパートだ。
加川部長より10歳も年上なのに、その下で係長をしている情けない人だ。
おそらく定年まで係長どまりだろう。
今年入社の僕の後輩たちですら、陰で多田係長を「ただいるだけか?長」
と馬鹿にしているが、それについては僕も同意だ。
あんな人が僕よりも高い給料をもらっているのが、むかついてしょうがない。
加川部長もいなくなるなら、こんな会社にいても仕方がない。
またハローワークで良い転職先が無いか探してみるか・・・
この間、ハローワークに行ったときは、東京の会社への転職を求めて
だったのだけれども、物無尊に諭されてそれはやめた。
また、物無尊に会うのが嫌だったから、それ以来ハローワークには行っていない。
でも、物無尊は宅急便の配達員に転職したようなので、
安心してハローワークに行けるぞ!よし、明日の休みに行ってみるか!
翌日~ハローワークにて~
「次の方どうぞ」という声に呼ばれて窓口に行ってみると、
「また、あなたですか?まだ転職を考えているのですか?」
あれ?まだ物無尊がハローワークで働いているな・・・
こいつ転職したのでは?
「宅配便の配達員に転職したのではないのですか?」
思わず、そう聞いてみると、
「ハローワークのこの仕事は契約社員なんでね、てきとうにやっておいて、
副業で配達員もしているのですよ。」
まじか、客にそれを言うなよ・・・
「さて、今回はどのようなご用件で?」
「え~と、実はねですね、うちの会社が~」
僕のうちの会社の現状、加川部長と多田係長の話を物無尊に話してみた。
話している途中で気が付いたけども、物無のやろう、つまらん・・・・という風な、
死んだ目で聞いていやがる。
「人生相談する場所ではないのですがね。まあ、相談する相手もいない寂しいあなたのために、私が相談に乗りましょう。」
ああ、こいつ殴りたい。
「まず、その加川部長の独立にはついていかないほうが良いでしょうな。」
「え?なぜですか?」
「これから2025年問題が控えて1億総貧困時代に突入するこの日本で、
しかも、その中でも特に経済力のない沖縄でこれから起業する?
正気ですか?
ネットで情報を売るような商売なら在庫も抱えないで済むから、いくらでもやればいいですけど、
卸売りから仕入れてそれを売る小売業タイプの仕事で、いまさら起業しようなんて、頭がおかしいですよ。そんな仕事は益率も低いですし。
そもそも、起業のための資金はどうするのです?おそらく銀行から借りるのでしょう?
頑張って会社を継続させたとしても、銀行への元本返済と利子のために働いているようなもので、何の自由もないですよ。」
「いや、貯金くらいあるんじゃないですかね?」
「それは君、沖縄という土地柄を分かっていないね。
家族経営の中小企業では、雇われの部長職の年収なんて、
せいぜい700~800万円が良いところでしょう。
それでも同年代の沖縄の平社員に比べたら2倍だけどね。
でもね、700万円なんていう半端な年収のくせに、BMW乗って、ブランド品ばかり身に着けていたら、ボーナスで毎月のマイナスを埋めているような状態ですよ。
ろくに貯金なんてできていないでしょうよ。
そんな男に限って、何の見栄か知らないけど、女房は専業主婦だったりしてな。
沖縄に限らず、地方の中小企業の部長、課長職あるあるだな。
そして、そんなに奴に限って、広くはないけど新築で見晴らしの良いマンションなんかを買って、ローンを払っていたりするんだよ。
馬鹿らしい。
本当に起業したいなら、軽自動車に乗って、
清潔感があるけどノーブランドのスーツ!みたいなお金を抑えたものを着て、
せっせと節約してお金を貯めるべきなんだよ。」
「あ!まさか多田係長は、その作戦で起業資金を貯めているのか!」
「いや、それはないでしょうな。
話を聞く限り多田係長は、そこまで仕事はできんでしょう。
でも、だからこそ、自分の「分をわきまえて」お金を使わないように、
意識して質素に生活をしているのでしょう。
能力が低いからこそ、
もしかしたらこれから早期退職を迫られるかもしれないと考えて、
その防衛のために節約してお金を貯めておいているのでしょうな。
さて、本当に賢いのはどちらかな?」
「そして、前も言いましたけど、
転職をしようと思っても、何のコネもなく、どこからの事前の引き抜きもなく、
アホ面下げてハローワークに仕事を探しに来るような、
何でもない普通なあなたは、どちら側の人間なのかという点です。」
「あなたは独立起業するわけでもなく、かといってバリバリ仕事をして出世するほどの努力もしたくない。
毎朝、朝起きて仕事に行くのが憂鬱だ、俺は社畜だと、
そんなに仕事頑張ってもいないくせに社畜風自慢をTwitterで垂れ流しているタイプのやる気のない人間でしょう?
だったら、今の仕事にしがみつきつつ収入を確保して、空いた時間で副業をして、
他に稼ぐ道をもう1つ、2つ作っておくというのが向いているでしょう。
うまく軌道に乗れば、その副業を本業にすればよいし、
うまくいかなければ、月数万円の小遣い稼ぎとして使えばよいのです。
多田係長のような人をクビにせずに雇えているということは、
お宅の会社はまだまだ経営に余裕があるということです。
加川部長のようなタイプの人間は、おだてて働かせまくっておいて、
自分はさっさと帰って副業を頑張ればいいのですよ。」
「そうやって副業で稼いだお金でプチ贅沢を楽しむのですね!ありがとうござい」
「あなたは本当に愚かな人間だ・・・バカは燃えないと分かんないのかな。
今日、火付けてこい。燃やしてしまえ。ふざけんな。今から建物壊してこい。損害賠償を個人で負え」
ありがとうございますを言う途中で明石市長風にディスられた。
「いいですか、プチ贅沢を楽しんでいたらお金は貯まらんのですよ。
あなたはお金を稼ぐ能力が低いんだから、金を稼げないんだから!
入ってくるお金が少ない以上、出ていくお金を減らす努力をやらないと
お金なんてたまらんぞ?」
「これからの日本人が意識すべきは、「少ないお金でどう人生を楽しむか」
これに限る。それができないとこれからの1億総貧困時代を生きられない。
まずは、節約してお金を貯める。あわせて副業もする。
そして収入の1/4以上をインデックス投資に回して、長期投資をする。
その資金で早期セミリタイアをするなり、起業するなりすればいいのです。」
「分かりました!ありがとうございます。
加川部長のようなスパイラルに入らないように、副業を探しながらお金貯めます!」
「君は頭が悪いけど、素直なところが良いところだな。
どうだね、私の弟子にならないか?」
「弟子というと?」
「まずは、私からミニマリストに関する情報商材を10万円で購入すると良いぞ。
そして、その商材をを他の人間に10万円で売るのだ。そうすると、私に5万円、
君に5万円入ってくる。これを繰り返していけば、すぐに金持ちになれる。
Twitterではね、今みんなこうやって儲けているんだよ。
だから、大学生で月収100万円のやつとか出ているんだよね~」
「もろマルチ商法やん!もう、帰ります!」
「さすがに引っ掛からないか。さすがわが弟子。」
「かってに弟子にしないでください。もう会う機会はありませんよ。さよなら。」
高笑いする物無尊を放っておいて、僕はハローワークを後にした。
もう会う機会はない・・・と思いたいが、
またどこかでやつに会うような気がしてならない。
2019/01/30記事作成